田舎の夏
これまで開業して三度のお盆は休まず働いた。外資系企業が多いこのビルは、お盆でも比較的休まず働いている人が多いせいもある。しかし今年は思い切ってクリニックを盆休みにした。
そして休みにしたもう一つの目的は、一ヶ月前に襲った中越沖地震の見舞いをかねて田舎に帰るためである。
 
田舎は東京と違って旧盆にお墓参りをする。先祖代々のお墓に花を活け、水をかけ、蝋燭や線香を立て、手を合わせる。三男坊のオヤジは分家であり、まだ我が家にはお墓がない。「門前」の屋号を持つ我が家の隣にはお寺があり、その周囲にはお墓が立ち並ぶ。集落を見下ろせるようにたくさんの墓標が山の斜面にところ狭しと並んでいる。
13日の夕方、先ずはオヤジの本家のお墓に手を合わせ、ついでオフクロの実家のお墓にお参りするのが順序だ。今年は久しぶりにご先祖様たちに手を合わせた。
そしてさらにヒメハルゼミの北限の地として知られている森を背にした能生白山神社や弁天岩の弁天さんにもお参りした。
 
田舎の夏の風景で自慢できるものに、日本海に沈む夕日と満天の星がある。
以前のコラムで載せた「とっとこ岩」は健在だったし、日本海に沈む夕日もまた相変わらず大きくてきれいだった。夕日から伸びる赤い帯が凪いだ海に映え、あっという間に水平線の向こうに消えていく。幾人もの旅行者たちが車を止め、バイクを止め、その美しい夕日に見惚れ写真を撮っている。
そして夜になると満天の星が夜空を飾る。大きな北斗七星やカシオペア座が北の空にあり、その横を天の川が佐渡に向かって夜空を横切っているのが見える。まさに芭蕉も見たに違いない天の川が江戸時代そのままにボクの前に広がる。
 
子供のころは屋根の上に上がって寝転びながら、星を数え流れ星を探すのが好きだったが、大人になった今、あまりに暗い田舎の夜に心なしか怯えるネオンに毒された自分を発見し情けなくなってしまった。
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